市民公開講座(参加費無料)
市民公開講座 1 11月21日(土) 15:20-16:20
「リワークと認知行動療法(CBT)-これまでとこれからの休復職支援を考える-」
- 企画者
- 片桐 陽子(医療法人栄仁会 京都駅前メンタルクリニック)
馬ノ段 梨乃(京都府立医科大学大学院 医学研究科 精神機能病態学) - 1
- リワークプログラムを経て復職した当事者へのインタビュー
- 2
- リワークプログラムの当事者と支援者 ~二つの立場を経験して
南堀 葉子(医療法人栄仁会 京都駅前メンタルクリニック バックアップセンターきょうと) - 3
- これまでのこれからの休復職支援 秋山 剛(NTT東日本関東病院)
過去1年間にメンタルヘルス不調によって連続1か月以上休業した労働者がいる事業場の割合は、全ての事業場の6.7%、従業員数300人以上の事業場に限ると65.6%~91. 9%と報告されており(平成30年労働安全衛生調査)、企業におけるメンタルヘルス対策、とくに休復職支援の取り組みは依然として重要なテーマとなっています。 このような中、医療機関や公的機関、企業等でリワークプログラムを提供する施設は増加し、そのプログラム内容も、利用者のニーズに合わせて、また施設の立地や特色を活かして、様々な工夫がなされています。なかでも認知行動療法は、再休職予防を目的として多くの施設が取り入れているプログラムといえますが、プログラムの効果や限界点について率直な議論を交わす場はまだまだ少ないと思われます。 そこで今回の市民公開講座では、実際に認知行動療法を含めたリワークプログラムを休職中に受講して復職に至った方をお招きして、復職後に役立つ休復職支援について考えたいと思います。はじめにリワークプログラムで認知行動療法を体験し復職した当事者の方の声をご紹介する予定です。続いて、当事者かつ支援者の立場として取り組んだご経験がある南堀葉子氏から、ご家族や職場関係者など周囲の支援者に知っておいてほしい事柄などをお話いただきます。最後に、集団認知行動療法を含めたリワークプログラムを形作ってこられた医師の立場から、秋山剛先生に今後の休復職支援のあり方についてお話しいただく予定です。 コロナウイルス感染拡大をきっかけに、私たちはさまざまな変化を体験しています。働き方や仕事に対する価値観も変わりゆく中、今後必要とされる休復職支援はどういったものなのか、認知行動療法の活用についても振り返り、今後の方向性について考える機会にもしたいと思います。 当事者の方々をはじめとして、ご家族や職場担当者など支援者の方々、医療機関などの治療提供者など、幅広いご参加をお待ちしております。
市民公開講座 2 11月22日(日) 11:00-12:00
「学校現場の状況とCBTの応用の可能性」
- 登壇者・企画者
- 清水 安夫(国際基督教大学 教養学部 アーツ・サイエンス学科 )
- 司会者
- 井上 和臣(医療法人内海慈仁会 内海メンタルクリニック・認知療法研究所)
2020年4月,日本全国の学校現場は,新型コロナ感染症の拡大の中,大変な混乱した状況でスタートしました。緊急事態宣言の発令後,児童生徒の学ぶ権利を擁護するために,リモートでの授業が企画されましたが,経済的に余裕のある児童生徒たちが通う私立学校を除いては,各家庭におけるPCの普及率やインターネットへのアクセス状況などに格差があるため,公教育の平等性の観点からスタートが遅れた学校が沢山ありました。一方,非常事態宣言の解除後,各学校では,三密を避けるために分散登校という形式で授業が再開され,多くの学校では,午前と午後の二部体制などの工夫により,各クラスの半数ずつの児童生徒を教室に受け入れました。このような分散登校体制について,教師やスクールカウンセラーに,学校や児童生徒の状況を聞いたところ,「教室が広く感じた」「子どもたち一人一人に目が届くようになった」「登校渋りの子どもが学校に出て来た」など,明るい話を聞くことが出来ました。ところで,筆者は,この20年間,学校教師のメンタルヘルスの研究を行って来ました。この研究課題に固執しているのは,自分自身が公立中学校で教師をしていた経験があり,その際に,学校教育制度の歪を起因とした労働環境が,教師のメンタルヘルスを悪化させていく現状を目の当たりにして来たからです。これは,経験論にもとづくものだけでなく,他の職業に比べて,教師のメンタルヘルスが悪い傾向にあることは,各種のエビデンスが示しています。例えば,文部科学省の統計データでは,日本全国の学校教師の精神疾患者数及び病気休職者数に占める精神疾患者数の割合は,2001年度の2503名(48.1%)から2018年度には5212名(65.6%)へと約2倍にまで増加しています。新型コロナ感染拡大に伴い,社会全体で労働体系を見直す動きが加速化していますが,学校の現状を見ても,以前から専門家から指摘されていた内容を一つ一つ精査し,無駄を省き,改善すべきところには財政を重点化して投じる必要があると思います。例えば,1学級の少人数化(日本はOECD加盟国34か国中で,小学校はチリに次いで,中学校はトルコについでワースト2)などは,真っ先に改善したい課題です。少人数教育にて,教師の目の行き届いた指導を目指すことに反対する人は少ないでしょう。日本の学校の現状は,上述した「教師のメンタルヘルス」を1つ取っても,児童生徒間の「いじめ」「不登校」「暴力行為」の各種の問題や児童生徒の「学習の遅れ」「勉強嫌い」などが深く関わっています。教師が本来の教育業務に徹することにより,教室内での子どもたちの人間関係を調整し,分かりやすい授業を展開するための準備が出来るようになり,児童生徒も教師も快適に学校生活が送れる状況を生み出す可能性が高いと考えられます。本公開講座では,学校の現状と改善方法について,話題を提供指せて頂こうと思います。